爽やかな南風が心地良く感じる五月。アカシアの花が咲きました。少し赤っぽいのは<ニセアカシア>で、普通の白いニセアカシアよりも、より蜜をふいてくれます。メジロも蜜を吸いに来て、そのお返しに可愛らしい上手なさえずりを聞かせてくれています。
仕事中、視線を感じ振り返ると、「ウッソー、な・な・何?」蜂場に現れる者で一番驚くのは“人間”!見知らぬおじさんが。冷静を装いこわばる笑顔で、「こんにちは」、すると「ハチ大丈夫?ハチがいなくなっちゃうんだってね。」と警戒心まるで必要なかった御心配のお言葉。「大丈夫です、ウチはハチがいっぱいいるんですよ、ありがとうございます。」と私。少し離れた畑からわざわざ来てくれたらしい。
このところのハチ不足の報道のお陰で皆さんが心配して下さる。会う方会う方に「ハチ大丈夫?」と言われています。当店を訪れるお客様も口々に「ハチ大丈夫ですか?大変なんですよね。」と。こんなにミツバチの存在価値を認めて心配してもらえるなんて“ちょっと幸せ”。縁の下の力持ちが表舞台に出られたような。ミツバチの花粉交配の働きが大きく言うと農業や食を支えています。他の昆虫も花粉交配しますが、ミツバチの体の大きさとか働きの良さが他の昆虫よりも優れていて美味・美形の実を結実させます。
当方のハチもモテモテで、イチゴ・マンゴー・梨・ブルーベリー・メロン・スイカとあちらこちらに出張しています。「しっかり働いてね!」と一声かけて送り出しています。
ハチ不足をよそに、当養蜂園もウチのお仲間のプロ中のプロ・筋金入りの(たぶん両腕とハートの辺りに)蜂屋さん達はビクともしていない。むしろ春になりどんどんハチが増えて仕事に追いまくられている。テレビやら新聞やらメディアの方々から沢山の問い合わせがありますが、「ウチは蜂がいっぱいいるんですよ、益々増えてます。」とお答えするとガッカリされます。
ゴールデンウィークの連休に入る前には東北から越冬に来ていた蜂屋さん達が続々とバタバタと蜂と共に帰って行きました。蜂の巣箱満載の大きなトラックが走り出し、車窓を開け、あったかーい東北訛で「お世話になりました、どうも。」とペコリと頭を下げ。山田洋次監督の映画のワンシーンのようでホロッとしました。こちらこそお世話になりました、秋にまた待っています。
春は分蜂(ぶんぽう)シーズンです。一箱の巣箱の中に蜂が増え過ぎると、働き蜂達はもう一匹女王蜂を誕生させて、すると古い方の女王蜂は後進に道を譲るように仲間を連れその巣箱を飛び出し、この写真のように、新しい棲家がみつかるまで木の枝などに固まってぶる下がっています。
蜂屋さんとしては分蜂されてしまうのは恥ずかしいので、私も必死で世話をしていますがなにしろ蜂群が多いので完全には抑えられず、「ちょっと待ってよ春パワー」と言いたい位。現実は“一時停止”してくれないので春は大変。スキニージーンズはただのゆったりジーンズに成り下がり、日々の宿題は溜まり続け、まずは自分を救わなくては。
自分の蜂ながら弱々しい情けない蜂でもグングン素晴らしい群になっていって春の力って凄いなぁーって毎年思うんです。夏にも秋にも感じられない、植物や動物に生命力を与える自然の持つ大きな春の力。地球の中心からの太陽からの大自然のリズムとダイナミックな力をミツバチを通じて感じます。
人間にも青春と云われる時代があり、それもやはり止めようのない若い色々なパワーが漲っているんですよね。今も青春?だいぶ無理がある。ガチョーン!!!
ハチ不足の原因でもあるCCD(群れ崩壊症)はコロンビア大学でも研究されていますが未だ未解明。ハチに変身して聞いてみないとわからなそう。カフカの「変身」という小説は主人公が虫に変身してしまうお話ですが、私も一日だけハチに変身して聞いてみたい事はいっぱいある。色々謎が解けるとすんごく仕事がやり易いんだけどな。
しかしカフカの小説は私にはよくわからない物だった。カフカはフカカイ!不可解な事は世の中にいっぱいある。“家族愛”を前面に出しながら爆弾を落とし子供の命まで奪ってしまう大きな国、と批判しながら何もできない自分。心冷えきり、どうしようもない辛さから逃れたいのに酔わせても温めてもくれないお酒。
先日放送された<アド街ック天国>も少しだけ不可解。21位で登場した当養蜂園のナレーションは誤解を呼びそうなので放送されてしまったのに、ですが訂正させて下さい。東北から来ている養蜂家はこちらでは蜜は採りません、越冬するだけです。(うるさすぎ?かな)でも、30秒足らずの映像でしたが、菜の花満開の当養蜂場はとってもキレイで皆さんに誉められました。入りたての菜の花の蜜は黄金色に輝いてキレイでした。ありがとうございました。
あそこに登場した蜂は私がお姫様状態に特に大事にしているセイヨウミツバチ(養蜂家が飼っているのはほとんどがセイヨウミツバチ)の中でも、ゴールデン種という黄金色でお姫様のように楚々として大人しく、しかも良く働いて“いい仕事”をしてくれる自慢の蜂なんです。もしご覧になった方がいて、あの蜂キレイと思った方がいたら“ミツバチ通!”(そんなの有り?)
飛行機がよく飛んでいく空が拡がっている蜂場が1ヶ所あります。次次仕事をこなし下ばかり見ていたのに、疲れて腰を伸ばしながらフーッと天を仰ぐとスッキリとした青空にぼんやりとした飛行機雲が。“ひこうき雲”をみるとユーミンの歌と共に美しきまま逝った友を思う。中学・高校とクラスメートだった。誰に媚びるでもなく聡明で大人っぽい考えのできる人で、美しい少女から美しい女性となり、同性からも好かれる素晴らしい人だったのに、あの夏、鶴のマークの制服と共に航跡に消えてしまった。
教室で勉強にも熱が入らず、間違って覚えた歌詞でユーミンの歌を「雨音に気付いて早く起きた朝は……..」と下手に歌っていると、「遅く起きた朝だよ」優しい笑顔でいつも直してくれたのをずっと覚えている。いまだにお母さまにお会いすると、こちらが泣いてしまってはいけないのに涙止まらなくなり申し訳なくなる。勉強不足を天に見透かされているように、懸命に生きているのに毎日恥を重ねて過ごしているこんな私の生き様を、空から見て美しいまま笑ってるだろうな。私などより生きてほしかったのに。あの夜のニュースの衝撃は未だに尾を引いていて消えない。
フランスでは5月1日に愛する人の幸せを願いスズランの花束を贈るそう。そんなステキな事は起こりそうもないので自分で調達。だーい好きな可憐なスズランに今年も出会えて“ちょっと幸せ”(写真を撮りそびれてしまった)。行きたかったのに行けなかった憧れのスターのコンサートのDVDを見られて“ちょっと幸せ”。桜の名所にも行けなかったけど桜ヒラヒラの映像を見られて“ちょっと幸せ”。朝玄関を出るとジャスミンがフワッと良い香りに包んでくれて“ちょっと幸せ”。
「ちょっとの幸せを見つけて毎日生きているんだよ。」と五月の眩しい空を見上げた。
5.13 れいこ
~愛し合ってるかい?~と歌ってくれた心優しきロックンローラー
男前の生き方とメッセージありがとう!合掌。
レノンさんと「IMAZINE」歌えるね!