7. <渋谷で胸キュン、儚さに>

「フェイントかけないでよ」とハチが言ってるような。2月に入ってから暖かいあったかすぎの日が続き春一番・春二番の強風が吹き、2月なのに気温25度を超える夏日まであったのに、その後の寒さ。さすがにこちら館山や南房総では雪は降らず、鋸山(のこぎりやま)を境に雨になりますが、真冬の寒さになっています。昨年もそうでした。春が来たと思わせてからの寒波です。夏の暑さも秋までズルズルとずれこんで、秋があったのか、夏から冬になったような。日本の四季が乱れているのを感じます。寒さで菜の花の花は散らずにきれいです。

暖かくなってお花が咲き、春が来たと思ったハチ達は蜜を集め、女王蜂は産卵が活発になり巣箱の中でハチの数がどんどん増えていくのですが、増えた後に寒波が来ると、寒さでハチは巣箱の外に出られず蜜を集められず餓死してしまうので、この自然からのフェイントは困りものです。この何年間は季節のメリハリがなくなってきているのと、季節がずれてしまっているのを感じます。ミツバチもとまどいますが、蜂屋さんとしてもとまどいます。

前回はハチミツの宣伝が入ってしまい失礼しました。ついハチミツの良さを言いたくて、とエクスキューズ。現在日本で売られているハチミツの5パーセントしか国産の物はありませんが、年々採蜜量は減ってきているのでもっと少ないかもしれません。当養蜂園も毎日のように各方面からオファーを頂きますが、とても対応できるだけ採蜜できませんのでお断りしていますので、宣伝する必要もないくらいです。もし言って頂くままに対応できるくらいハチミツが採れたらアラブの石油王のようなセレブになれるかも!?!

バレンタインデーには…と.語りながら、悲しいかな、もはやドキドキする事などなく、私の事を相手にしてくれるのはウチの駄犬だけで(名前はファルコン・小学校に捨てられていた雑種・特技は「ひふみのハチミツ・ナンバー…」と言うと「ワン」と吠え、「こりゃまた失礼いたしました」と言うと“ガチョーン!”と前足を動かします。器量も悪いけど可愛いいんです)そんなファルちゃんしか相手にしてくれない淋しく退化した私のハートは地球規模のスケール大きなどでかい愛に会いに行きました。2月14日、ミツバチのように飛べないわたしは、働き蜂状態で疲れた体を引きずりながら、渋谷にある国連大学での「国境なき医師団」の講演会へ。

青山劇場の隣にある国際連合大学で国境なき医師団(MSF)日本事務局長エリック・ウアネス氏の<10の最も深刻な人道的危機>と題されたフランス出身のウアネス氏のきれいな英語でのお話と(もちろん通訳者付き)、リアルで悲惨な現状の映像。虚ろな眼差しの痩せ衰えた子供とその母親・傷んだ人々。儚い命に目頭熱くなり胸がキューンと痛みました。国境なき医師団のスタッフでさえ連れ去られ殺害されてしまう現状や戦闘下で医療援助さえできない国もあり罪もない人々が犠牲になっています。

政治・宗教・民族など難しい事は私には解りませんが一番大事な物って何でしょうか?あの子供たちの生まれてきた意味って何なんでしょうか?ミスチルの「GIFT」の桜井さんの詩にあるように「一番ひかってるものってなんだろう?」。私がこの世の中で一番好きな物は<笑顔>。あの子供たちに母親たちに心から微笑む日は来るのでしょうか。来てほしい。
ミツバチというたくさんの小さな命と向き合っている分生命に敏感なのかもしれません。

段々年を重ねると人の夢と書いて“はかない”ということが身に染みてわかる気がします。私の夢の一つにこの養蜂の力で飢餓や病気や暴力や貧困etc…….で苦しむ子供たちや少女や女性の力になれないかなぁーと、その術も解りませんが漠然と思っています。私の生ある内に実現するでしょうか。よく取材で「ミツバチが一生かかって集められる蜜はスプーン一杯です」と答えますが、その度に、はたして私は一生かかってどの位の仕事ができるんだろう、と思ってしまいます。私のその儚い夢に向かってまたお仕事がんばりましょう。

国連大学から渋谷駅へ歩く時、悲惨な現状の映像の残像とそんな世界のやりきれなさと自分の無力さ非力さに、おしゃれな若者で賑わう渋谷の街はモノクロームに映るようでした。

3.6  れいこ

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