17.<冷たくしないで>

三月になると「チャッチャッチャッ」という鶯の藪鳴き(やぶなき)が「ホーホケキョ」に変わり、なんとも美しく山に響き渡り、蜂の巣箱の周りには、つくしんぼうやタンポポやオオイヌノフグリが咲き始め、巣箱の中をのぞくと菜の花の蜜がキラキラ光り、うららかな春だなーと思っていたのに、今年もまた大フェイントの寒さ多い三月となりました。
咲き始めたサクラの花々の「冷たくしないで!」という声が聞こえてきそうな真冬へ逆戻りの、春なのに冬模様。

蜂屋さんの私は焦る焦る超焦る。ポリネーション(花粉交配)用のミツバチをたーくさん用意しなくてはいけないのに雨や気温の上がってくれない寒さの日が多く仕事が進まず。
「雨は思い出を甦らせてくれる」なんて感傷に浸っている場合ではなく、春は蜂屋さんの勝負時!“人工太陽”でも蜂場に取り付けたい位です。(誰か発明して!)プロとしては言い訳はしたくないし。
お天気の変わりように一喜一憂ハラハラです。
美しくグラマラスで魅惑的だけれども我儘な女性に翻弄される男性の気持ち解るような…。春を待っていたミツバチにも、魅惑的でもない蜂屋さんにも、「冷たくしないで!」と言いたくなるようなこの春のお天気。
変わり易い秋の空模様に<女心と秋の空>とは言いますが<女心と春の空>の方が今風のような。

3月前半でした、ついに南房総を荒らしているイノシシに遭遇してしまいました。もう薄暗い夕方に、やり残した仕事をしにその蜂場に戻ったら、それはそれは大きなイノシシが車を止めた15メートルほど近いの所に。いつもそこで仕事をしている時に蜂場脇の山の斜面でガサゴソッと音がしたりして、イノシシかな?と思ったりしていましたが、まさかあんな大きなイノシシとは思いませんでした。
夜行性で人間や犬の臭いにとても敏感だから大丈夫会ったりしないと聞いていましたが。
見たところ80キロはゆうにある迫力ある大きな姿でした。ある蜂屋さんに言ったら、「ウチの奥さんの方が凄い。」と・・・・・。

私も愛犬ファルコンも車から出られず、そのイノシシは車の中でワンワン吠えるファルの方を見つめ立ち止まり、少し歩いては又ファルの方を見つめ立ち止まり、の繰り返しのゆっくりの堂々とした感じで山の中へ見えなくなりました。
イノシシは雑食だそうで、農作物やこれからの季節おいしい竹の子を食べたり、土の中の生き物を食べる為に土を大きく掘り返しそこら中をグチャグチャにしたり、色々被害大きいワルサをしています。
蜂の巣箱はいじりませんが周りの地面を掘り返します。何だかそこの蜂場で仕事をするのが怖くなってしまいました。
ファルコンはそれ以降車から絶対降りなくなりました。(ご主人様を守らなくていいの?)

3月23日(火)館山にある安房自然村(あわしぜんむら)に於いて<ミツバチ供養>の法要を行いました。
もう30年も前に父と母が“蜜蜂の碑”の建立に一生懸命で、なぜかウチの父と馬の合う安房自然村の社長さんが全面協力して下さり、ずっと続いている毎年の養蜂家の皆さんの行事です。
ミツバチが大好きなハチミツとお花と果物をお供えして、「ミツバチよありがとう、人間の為に自然界の為に働いてくれてありがとう、安らかに。」と、蜂屋さん達が神妙に手を合わせます。生き物を相手にしている人達はやっぱり情のある方々だなと思います。
供養の後は宮崎大学農学部教授の講演をお聞きしました。

翌日の3月24日(水)は蜂の検査がありました。
養蜂家は自由に蜂を連れて土地から土地へ移動している訳ではなく、家畜保健衛生所の獣医の先生方に、養蜂にとって恐ろしい蜂の伝染病が無い事や、健康状態・衛生状態をチェックして頂き、それにパスし、証明書を発行してもらい、始めて県を跨ぎ移動できるのです。行政への届出・許可を頂く事も必要です。
白装束にガッチリとガードした鴨川に在る南部家畜保健衛生所の先生方に今年もお世話になりました。皆無事に合格でした。
今、私たちが恐れているのは、趣味で蜂を飼う方から病気が出ているのでは?という懸念です。趣味で飼っている方々もぜひ検査をうけて頂きたいものです。

3月31日(水)NHKハイビジョン新番組<いのちドラマチック>第1回目ミツバチという事で拝見させて頂きました。
常々セイヨウミツバチの免疫力を高めるのにはどうしたら良いかを考えている私としては共感できる部分はありました。
いつも山の中でポツンと仕事をしていると、自分の存在のちっぽけさと共に、人間も自然の一部なんだとすごく実感します。抗えない大きな自然の中を生きる生物であるミツバチもヒトも自然に即して生きる・育むのが理想ですね。
理想と現実の間で、生業としての養蜂という面でなかなか理想通りにはいきませんが、そこは目指すところでもありますが。
だからこそ、本来の“自然な自然”・“自然なサイクルの自然”となり自然相手の者達に優しい地球になってほしいものです。
(女性アナウンサーのヘアースタイルとファッションがドラマチック!なカンジでしたね。)

東京で見かけた卒業式でのワンシーンです。「未来へ飛んでけー!」って感じですね。多分チアガールの皆さんでしょう、“若さ”っていいですね。(実感込もり過ぎ!)
行きたい所はいっぱいあるけれど、本当に一番行きたいのは場所ではなく“あの頃”。
「キュッキュッ」というバスケットシューズがコートの床を蹴る音、「シャッ」というボールがゴールに吸い込まれる音、走りこみの「ハァーハァー」という息づかい、ポタポタと流れ落ちる汗、誰かのジョークに体育館に響くみんなの笑い声、希望に胸ときめいていた頃。
”時をかける少女“には到底なれるハズもなく、”あの頃“に戻る事は絶対無理だけれど…・・。
“ないものねだり”は止めて今・現実をせいいっぱい生きましょう、明日の予報は晴れマーク!

<花咲く頃>というタイトルの、この時期に飾りたいスペインのトレンツ・リャドという画家のリトグラフです。最近のお気に入り!

もう四月になってしまい梨のお花が咲き始め、益々心焦り落ち着きません。まだまだ修行も精進も足りませんね。

京都のお寺さんに在ったお言葉です。
<精進 なすべきことを なしとげて 春は来る>

4.3 れいこ

安房高校剣道部・センバツ大会・全国優勝おめでとう!ヨッ、日本一!!!

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